2026年2月27日
「住宅ローンも完約したし、家も築30年を超えて古くなった。もう火災保険は解約して、保険料を老後資金に回してもいいのではないか?」
マイホームを購入してから長い年月が経ち、子供も独立して夫婦二人暮らしになった頃、ふと手元に届く火災保険の更新案内を見て、このように考える方は非常に多くいらっしゃいます。
確かに、家を建てた当初(あるいは購入した当初)は、数千万円という借金を抱えているため「万が一火事になって家がなくなっても、ローンだけが残る」という恐怖から、誰もが当然のように火災保険に加入します。しかし、ローンという縛りがなくなった途端、そして建物の資産価値(固定資産税評価額など)が下がったと感じた途端、火災保険の必要性に疑問を感じるようになるのは無理もありません。
結論から申し上げますと、「築年数が古くなった家(築30年以上)こそ、火災保険は絶対に必要であり、むしろ新築時よりもその重要性は増している」というのが、リスクマネジメントの観点からの絶対的な正解です。
古い家は、新しい家にはない「目に見えないリスク」を大量に抱え込んでおり、一度災害や事故が起きれば、老後の蓄えを一瞬で吹き飛ばすほどの莫大な修繕費、あるいは建て替え費用が発生するからです。
しかし一方で、築古物件であるがゆえに「保険会社から加入を断られる(引き受けを拒否される)」ケースや、更新時に「保険料が異常に高く跳ね上がる」といった、築古ならではの厳しい現実が存在することも事実です。
本記事では、築30年以上の住宅における火災保険の必要性と、老朽化がもたらす恐ろしいリスクの実態、そして「なぜ保険に入れないケースがあるのか」その理由と対策までを徹底的に解説します。
さらに、家計の負担となる保険料を賢く抑えつつ、本当に必要な補償だけを残す「老後を見据えた保険の見直しテクニック」も網羅しています。あなたの大切な財産と、これからの穏やかな生活を守り抜くための指針として、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかる「築古住宅と火災保険」の真実
- ローン完済後も火災保険を絶対に解約してはいけない「4つの理由」
- 築30年以上だと保険会社から「加入を断られる(謝絶)」ケースとその原因
- 古い家で最も怖いのは火事ではなく「台風」と「水漏れ」の現実
- 絶対に間違えてはいけない!「新価(再調達価額)」と「時価」の罠
- 年金生活でも安心。保険料を安く抑える「補償のスリム化」テクニック
目次
家が古いからこそ危険!築30年以上の住宅が抱える「4つの爆弾」
「家が古いから、燃えても惜しくない。いざとなったら土地だけ売ってマンションに引っ越すから保険はいらない」
そう豪語する方もいますが、災害は「家が燃えて綺麗に無くなる」ような都合の良い結果ばかりをもたらすわけではありません。中途半端に壊れ、そこに住み続けるための莫大な修繕費を要求してくるのが自然災害の恐ろしいところです。
築30年以上の家は、新築時には想像もしていなかった様々なリスク(爆弾)を抱えています。
理由1:電気配線の老朽化による「火災リスク」の激増
築30年以上の家で最も警戒すべきは、火災の発生確率が新築時に比べて跳ね上がっているという事実です。その主な原因は「電気配線の老朽化」と「トラッキング現象」です。
壁の中を通っている電気配線の被覆(ビニールなどのカバー)は、経年劣化によって硬化し、ひび割れやネズミによるかじり被害が発生しやすくなります。そこから漏電し、壁の内部で火花が散って出火する「目に見えない火災」が非常に多いのです。
また、長年挿しっぱなしになっている冷蔵庫やテレビの裏のコンセントにホコリが溜まり、そこに湿気が加わることで発火する「トラッキング現象」も、古い家ほど起こりやすい傾向にあります。
最新のシステムキッチンやIHクッキングヒーターを入れて火の元を無くしたつもりでも、家の血管である「配線」が古ければ、火災リスクは常に潜んでいるのです。
理由2:台風や強風に耐えられない「屋根・外壁の脆さ」
火災保険の支払い事由として、火事よりも圧倒的に多いのが「風災(ふうさい)」、つまり台風や強風による被害です。
築30年以上が経過した屋根瓦は、漆喰(しっくい)が崩れて瓦がズレやすくなっていたり、スレート屋根が紫外線で劣化して割れやすくなっていたりします。また、外壁のシーリング(コーキング)もとっくに寿命を迎えており、少しの強風で雨水が室内に侵入する状態になっています。
一度の大型台風で屋根が吹き飛び、そこから雨漏りが発生した場合、屋根の修理(足場代含む)と室内のクロスや床の張り替えで、200万円〜300万円の費用が飛んでいくことは珍しくありません。この修繕費を年金生活の中で捻出するのは至難の業ですが、火災保険の「風災補償」に加入していれば、これらをカバーすることができます。
理由3:給排水管の寿命による「水濡れリスク」
築30年以上ともなれば、家中に張り巡らされている水道管や排水管も寿命を迎えています。特に昔の鉄管などは内部にサビが蓄積し、ある日突然水圧に耐えきれずに破裂したり、つなぎ目から水が漏れ出したりします。
床下や壁の中で漏水が起きると、気づかないうちに木材が腐り、シロアリを呼び寄せ、床が抜け落ちる事態になります。もしあなたがマンションやアパートの2階以上に住んでいて配管が破裂した場合、階下の住人の部屋を水浸しにしてしまい、莫大な損害賠償を請求されることになります。これも、火災保険の「水濡れ補償」や「個人賠償責任特約」に入っていなければ、全額自腹で賠償しなければなりません。
理由4:解体と瓦礫(がれき)撤去費用の恐ろしさ
「家が燃えたら更地にして売るからいい」という考えの最大の落とし穴が、「燃えカス(残存物)の片付け費用」です。
火災で半焼、あるいは全焼した家は、そのままの状態で土地を売ることはできません。必ず解体し、真っ黒に焦げた木材や溶けた家電製品などの瓦礫をすべて撤去し、綺麗な更地にする必要があります。
火災後の瓦礫は「一般廃棄物」ではなく、処理費用が極めて高額な「産業廃棄物(または特別管理廃棄物)」として扱われます。一般的な30坪の木造住宅であっても、火災後の解体・撤去費用だけで200万円〜400万円以上かかるケースがほとんどです。
火災保険に入っていなければ、家を失った上に、この瓦礫撤去費用を自腹で支払わなければ、土地を売って次の生活資金に充てることすらできないのです。
なぜ?築年数が古いと火災保険に「入れない(断られる)」ケース
築古物件に火災保険が必要不可欠であることは間違いありません。しかし、「じゃあ明日から入り直そう」と保険会社に連絡しても、「申し訳ありませんが、そのお宅ではお引き受けできません」と加入を拒否される(謝絶される)ケースが存在します。
保険会社もビジネスである以上、「あまりにもリスクが高すぎる(すぐに保険金を支払うことになりそうな)物件」は契約を避けたいのが本音です。具体的にどのようなケースで断られるのかを見ていきましょう。
ケース1:外観からわかる「著しい老朽化・破損」がある
保険会社は、契約前に必ず建物の状態(外観)の確認を求めます。最近ではスマホで家の外観写真を撮影して送るよう指示されることが多いです。
この時、以下のような状態が確認されると、加入を断られる確率が極めて高くなります。
- 屋根瓦が広範囲にわたって崩れている、またはブルーシートが掛けられたままになっている。
- 外壁に大きな亀裂(クラック)が入っていたり、壁の一部が崩落していたりする。
- 家全体が傾いている(不同沈下している)のが目で見てわかる。
- シロアリの被害が進行し、柱や土台が腐っていることが明白である。
これらの状態は「すでに事故が起きている」または「次の少しの風や雨で確実に被害が出る」状態とみなされ、保険制度の前提である「偶然の事故」に該当しなくなるため、引き受け不可となります。
ケース2:違法な増改築(建築基準法違反)をしている
築年数が古い家によくあるのが、過去に確認申請を出さずに勝手に増築をしていたり、建ぺい率・容積率を大幅にオーバーしている「違法建築物」になっているケースです。
火災保険は適法な建物を対象とするため、著しい建築基準法違反がある物件は、コンプライアンスの観点から引き受けを断られることがあります。特に、増築によって耐震性が著しく低下していると判断された場合は絶望的です。
ケース3:完全に「空き家」になっている
「実家を相続したが、誰も住んでいない築40年の空き家」に火災保険をかけようとするケースです。
一般的な火災保険(住宅物件)は、「人が生活の拠点としていること」が条件となります。誰も住んでいない空き家は、放火のターゲットになりやすく、雨漏りなどのトラブルの発見が遅れて被害が拡大しやすいため、住宅用の火災保険には加入できません。
この場合は、保険料が割高で補償内容が制限される「一般物件(店舗や倉庫などと同じ扱い)」としての火災保険を検討するか、空き家専用の保険を探す必要があります。
ケース4:過去に何度も保険金を請求している(事故多発物件)
これまでに台風のたびに何度も保険金を請求している場合、保険会社は「この家は災害に対して極めて脆弱であり、根本的な修繕が行われていない」と判断します。
保険会社間で事故歴の情報は共有されているため、他社に乗り換えようとしても「過去の事故歴が多すぎるためお引き受けできません」と断られることがあります。保険金をもらって修理せずにお小遣いにしてしまった、というような行為は後々自分の首を絞めることになります。
絶対に間違えてはいけない!築古の保険における「新価」と「時価」の罠
もし築30年の家で火災保険に加入できた(あるいは更新できた)としても、契約内容の設定を間違えると、いざ火事になった時に「保険金が少なすぎて家が再建できない」という悲劇に見舞われます。
その運命を分けるのが、建物の評価額を「新価(再調達価額)」で設定するか、「時価」で設定するかという問題です。
時価契約の恐ろしさ(泣き寝入り確定)
「時価」とは、同等の家を現在建て直すのに必要な金額(新価)から、「経過年数による価値の目減り(経年減価)」を差し引いた金額のことです。
日本の木造住宅は、税法上の法定耐用年数が22年と定められており、市場価値としては築20年もすれば「建物の価値はほぼゼロ」とみなされます。
もし築30年の家を「時価」で契約していた場合、全焼しても支払われる保険金は「新築時の10%〜20%程度」にしかなりません。
例えば、建て直すのに2,000万円かかる家でも、時価契約なら「400万円」しか支払われないのです。これでは家を建てるどころか、瓦礫の撤去費を払って終わりです。
必ず「新価(再調達価額)」で契約する
現在販売されている火災保険の主流は「新価(再調達価額)」での契約です。
新価とは、「今、全く同じ家をもう一度新築で建て直す(あるいは修理する)ために必要な金額」のことです。築30年であろうが築50年であろうが、新価で契約していれば、古さによるマイナス評価を受けることなく、家を元通りにするための十分な保険金(例えば2,000万円)が満額支払われます。
しかし、昔(何十年も前)から長期契約で火災保険に入りっぱなしになっている場合、当時の契約が「時価」になっている可能性があります。この状態で家が燃えると取り返しがつきません。今すぐ保険証券を確認し、「新価(または再調達価額・新価実損払)」という記載がなければ、直ちに見直しを行うべきです。
保険料が高すぎる?築古住宅の「補償をスリム化」する節約術
築年数が古い家は、災害リスクが高いとみなされるため、新築時に比べて保険料が割高になります。
年金生活の中で高い保険料を払い続けるのは苦しい、だから解約したい……。その気持ちはわかりますが、解約するのではなく「不要な補償を削って保険料を抑える」というアプローチをとるべきです。
1. 「免責金額(自己負担額)」を高く設定する
保険料を最も効果的に下げる方法は、免責金額を高く設定することです。
免責金額とは、「損害が出た場合、この金額までは自分で払います(保険金は請求しません)」という自己負担のボーダーラインのことです。
例えば、免責金額を「0円」から「5万円」や「10万円」に引き上げるだけで、保険料は大幅に安くなります。
「5万円以下の小さな修理(窓ガラスが割れた等)は貯金から出す。その代わり、数百万かかる台風被害や全焼リスクだけは保険でカバーする」というメリハリの利いた使い方が、老後の賢い保険戦略です。
2. 「水災補償」の必要性を見極める
火災保険の中で最も保険料を押し上げているのが「水災(洪水や土砂崩れによる床上浸水)」の補償です。
ここで、国土交通省や自治体が発行している「ハザードマップ」を確認してください。
自宅が小高い丘の上にあり、近くに川もなく、土砂災害警戒区域にも入っていないのであれば、水災に遭う確率は極めて低いです。この場合、思い切って水災補償を外す(不担保にする)ことで、保険料を劇的に節約できます。(※ただし、最近はゲリラ豪雨による内水氾濫もあるため、判断は慎重に行う必要があります)。
3. 「家財保険」の評価額を現状に合わせる
建物だけでなく、家の中の家具や家電を守る「家財保険」。
子供が同居していた新築当時は、家財の総額を「1,000万円」で設定していたかもしれません。しかし、子供が独立し、夫婦二人だけになり、古い家具ばかりになった現在、本当に1,000万円もの家財があるでしょうか?
実態に合わせて家財保険の評価額を「300万円」や「500万円」に減額することで、無駄な保険料をカットできます。
もし保険会社に「加入を断られた」場合の対処法
老朽化が原因で、今の保険会社から「次回の更新はお断りします」と言われてしまった場合、無保険の恐怖に怯えることになります。しかし、諦めるのはまだ早いです。
対処法1:他の民間の損害保険会社をあたる(相見積もり)
火災保険の「引き受け基準(どこまで古い家を許容するか)」は、保険会社によって異なります。
A社で断られても、B社やネット型のC社であれば、すんなりと加入できるケースは多々あります。
一社で断られたからといって絶望せず、火災保険の「一括見積もりサイト」などを利用して、複数の保険会社に同時にアプローチしてみてください。その際、加入条件が緩い反面、保険料が少し割高になる会社もあるため、比較検討が重要です。
対処法2:「共済(都道府県民共済・全労済など)」を検討する
民間の損害保険会社が全滅だった場合の強い味方が「共済」です。
こくみん共済(全労済)や都道府県民共済、JA共済などは、営利を目的としない相互扶助の組織であるため、民間保険会社に比べて古い家に対する引き受け基準が緩い傾向があります。また、掛け金(保険料)も比較的安く抑えられます。
ただし注意点として、共済は民間保険に比べて「台風や水災などの自然災害時に支払われる見舞金の金額が少ない(満額出ないことが多い)」というデメリットがあります。あくまで「全焼した時の生活再建資金(火災リスク)」を最優先に守るための最後の砦と考えましょう。
対処法3:最低限の「修繕」を行ってから再申請する
もし「屋根の瓦が崩れているから」という明確な理由で断られたのであれば、その部分だけをリフォーム業者に依頼して修繕し、綺麗な状態になった写真を撮って保険会社に再提出すれば、引き受けの許可が下りる可能性が高まります。
保険に入るための修繕費は痛い出費ですが、無保険で家が全焼して数千万円を失うリスクに比べれば、必要な防衛費用(先行投資)と言えます。
まとめ:古い家こそ「最後のお守り」を手放してはいけない
「築30年以上経ったから火災保険はいらない」という考えは、最も危険なタイミングでシートベルトを外すような行為です。
老朽化によって火災や自然災害のダメージを受けやすくなっているだけでなく、万が一の際に家を再建するための「お金の体力(住宅ローンという名の借金をする力)」も、若い頃に比べて落ちているはずです。
年金暮らしの中で、台風で屋根が飛んだ修理費の300万円を貯金から出せますか? もし全焼したら、解体費を払い、老後を過ごす新しい住まいを自力で確保できますか?
火災保険は、単に建物を直すためのものではありません。老後の平穏な生活、そしてあなたの命の基盤を守り抜くための「最後のお守り」です。
そのまま漫然と高い保険料を払い続ける必要はありません。現在の家の状況、ハザードマップ、そして老後の家計に合わせて、「不要なものは削り、絶対に必要な『新価』の補償だけを残す」という最適化(見直し)を行うことが、築古住宅のオーナーに求められる最大のミッションです。
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