2025年10月1日
目次
なぜ今?住宅ローン完済目前の「築30年」が見直しの絶好機である理由
「この家を建てて、もう30年か…」
壁の傷や、少し色あせた柱に、家族と共に歩んできた長い年月の思い出を感じ、感慨深い気持ちになることもあるのではないでしょうか。
住宅ローンもようやく終わりが見え、肩の荷が下りてホッと一息。そんな方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、その安堵と同時に、ふとこんな不安が頭をよぎりませんか?
「そういえば、家の火災保険ってどうなってるんだろう?」「家を建てたときに入ったきりだけど、このままで本当に大丈夫なのかな…」
もし、少しでも心当たりがあるなら、今こそが、あなたの家の火災保険を根本から見直す、まさに絶好のタイミングです。
なぜなら、30年前に加入した火災保険は、今のあなたの家と暮らしを守るには、あまりにも「時代遅れ」になっている可能性が非常に高いからなのです。
この章では、古い火災保険に入り続けることの具体的なリスクと、なぜ「築30年」という節目が見直しのベストタイミングなのか、その理由を丁寧にお話ししていきます。
リスク1:補償額が足りない!「時価額」契約の落とし穴
まず、最も知っていただきたい、そして最も恐ろしいリスクが、保険金額の決め方に関する問題です。
30年ほど前に主流だった火災保険は、その多くが「時価額(じかがく)」という基準で保険金額が設定されていました。
「時価額」とは、簡単に言うと「今の建物の価値」のことです。
建物は年月の経過とともに古くなり、価値が下がっていきます(これを経年劣化といいます)。
時価額契約では、この経年劣化による価値の減少分を、保険金額から差し引いてしまうのです。
例えば、30年前に2,000万円で建てた木造の家があったとします。
もし、この家が今、火事で全焼してしまった場合、「時価額」で計算されると、建物の価値は800万円程度しかない、と判断されてしまう可能性があります。
つまり、受け取れる保険金はわずか800万円。これでは、同じ家を建て直すための費用には、到底足りません。
これに対して、現在の火災保険の主流は「新価(しんか)」、または「再調達価額(さいちょうたつかがく)」という基準です。
これは、もし同じ家を「今、新たに建て直すとしたらいくらかかるか」という金額を基準にするため、築年数に関係なく、再建に必要な費用がきちんと支払われます。
この「時価額」から「新価」へ切り替えることこそ、火災保険を見直す最大のメリットなのです。
リスク2:補償範囲が狭すぎる!現代の災害に対応できない旧式プラン
30年前と今とでは、私たちの暮らしを取り巻く災害のリスクも大きく変化しています。
毎年のように「観測史上初」という言葉を耳にする、ゲリラ豪雨や大型台風。
昔では考えられなかったような自然災害が、もはや日常となりつつあります。
しかし、30年前に作られた火災保険の多くは、補償の範囲が非常に限定的でした。
最もシンプルなプランでは、「火災」と「落雷」「破裂・爆発」くらいしか補償されない、というものも珍しくなかったのです。
これでは、近年多発している以下のような損害には、全く対応できません。
・台風の強風で屋根瓦が飛ばされた(風災)
・ゲリラ豪雨で床上浸水してしまった(水災)
・大雪の重みでカーポートが壊れた(雪災)
・子どもが遊んでいて窓ガラスを割ってしまった(破損・汚損)
あなたの保険証券を一度確認してみてください。
もし、これらの補償が付いていなかったとしたら、あなたの家は、現代の多様なリスクに対して、ほとんど「丸腰」の状態にあるのと同じことなのです。
リスク3:保険料が割高なまま!使えない「抱き合わせ補償」
「古い保険でも、いろんな補償が付いているから大丈夫」
そう思っている方も、注意が必要です。
昔の火災保険は、今のように必要な補償を自分で選べる「カスタマイズ型」ではなく、あらかじめ補償がセットになった「パッケージ型」の商品が主流でした。
そのため、あなたの家の状況には全く必要のない補償まで「抱き合わせ」で契約してしまい、その分のムダな保険料を30年間ずっと払い続けている可能性があるのです。
その典型的な例が「水災補償」です。
例えば、あなたが住んでいるのが高台にあるマンションの10階だったとします。
洪水や土砂崩れによる床上浸水のリスクは、まず考えられませんよね。
にもかかわらず、水災補償がセットになったプランに加入していると、毎年、数千円から一万円以上の保険料を、ただただ捨てているのと同じことになってしまいます。
現在の保険は、ハザードマップなどを確認しながら、自分にとって本当に必要な補償だけを選んで加入することができます。
不要な補償を外すことで、保険料を賢く節約できる。これも、見直しがもたらす大きなメリットの一つです。
リスク4:長期契約の満期と住宅ローン完済という「節目」
築30年というタイミングは、火災保険の契約そのものにとっても、大きな節目となります。
住宅ローンを組んだ際、多くの方が30年や35年といった、ローン期間と同じ長さの長期火災保険に一括払いで加入しています。
つまり、築30年という時期は、その長期契約がちょうど「満期」を迎えるタイミングでもあるのです。
また、住宅ローンの返済が終わると、これまで義務付けられていた火災保険への加入は、あなたの任意となります。
この二つの「節目」が重なる今こそ、これまで銀行に勧められるがままに入っていた保険から卒業し、初めてあなた自身の意志で、自分の家に本当に合った保険を選び直す、またとないチャンスなのです。
住宅ローン完済後は、火災保険の加入は任意になりますが、それは「入らなくてもいい」という意味ではありません。むしろ、これからはあなた自身の責任で、大切な資産である家をしっかりと守っていく必要性が、より一層高まるということを、心に留めておいてください。
「古い家は高い」は誤解?築30年の火災保険料、リアルな相場観
「火災保険を見直す必要性はよく分かった。でも、やっぱり気になるのは保険料のこと」
「築30年も経った古い家なんだから、新しく保険に入り直したら、ものすごく高くなるんじゃないの?」
多くの方が、このような不安をお持ちになることでしょう。
確かに、火災保険料は築年数の影響を受けますが、「古い家だから法外に高くなる」というのは、実はよくある誤解の一つです。
保険料は、築年数だけでなく、さまざまな要素が複雑に絡み合って決まります。
この章では、あなたの家の保険料がどのように決まるのか、その仕組みとリアルな相場観について、分かりやすく解説していきます。
築年数だけで決まらない!保険料を左右する5つのポイント
火災保険の保険料は、決して築年数という一つの要素だけで決まるわけではありません。
主に、以下の5つのポイントの組み合わせによって、最終的な金額が算出されます。
① 建物の構造
最も大きな影響を与えるのが、建物の構造です。燃えにくい構造であるほど、火災リスクが低いと判断され、保険料は安くなります。
具体的には、コンクリート造のマンションなどが該当する「T構造(耐火構造)」が最も安く、木造の戸建てなどが該当する「H構造(非耐火構造)」が最も高くなります。
② 所在地
意外に思われるかもしれませんが、家がどこに建っているかも保険料に影響します。
これは、都道府県ごとに台風や大雪、豪雨といった自然災害の発生率が異なるためです。災害リスクが高いと判断される地域ほど、保険料も高くなる傾向があります。
③ 補償内容
当然ながら、補償を手厚くすればするほど保険料は上がります。
火災や風災といった基本的な補償に加えて、水災や破損・汚損など、あらゆるリスクに備えるフル装備のプランと、必要なものだけに絞ったシンプルなプランとでは、保険料に大きな差が生まれます。
④ 保険金額
「建物」と「家財」に、それぞれいくらの保険をかけるかによって保険料は変わります。
建物の評価額(再調達価額)が高ければ保険料も上がりますし、家財の補償額をどう設定するかでも金額は変動します。
⑤ 免責金額(自己負担額)
もし損害が発生した際に、いくまでなら自分で負担するか、という自己負担額(免責金額)を設定することができます。
この免責金額を高く設定する(例:5万円→10万円)ほど、保険料は安くなります。
【ケース別】戸建て・マンションの保険料シミュレーション
では、実際に築30年の家の場合、保険料は年間でどのくらいになるのでしょうか。
あくまで一般的な目安ですが、具体的な条件を仮定してシミュレーションしてみましょう。
【ケース1:木造戸建ての場合】
・所在地:東京都
・構造:木造(H構造)
・延床面積:120㎡(建物保険金額 2,000万円)
・家財保険金額:500万円
・補償内容:水災補償あり、破損・汚損補償ありの充実プラン
→ このような条件の場合、年間の保険料の目安はおよそ4万円~7万円程度となることが多いです。
【ケース2:マンションの場合】
・所在地:東京都
・構造:鉄筋コンクリート造(T構造)
・専有面積:70㎡(建物保険金額 1,200万円)
・家財保険金額:300万円
・補償内容:水災補償なし、破損・汚損補償ありの標準プラン
→ このような条件の場合、年間の保険料の目安はおよそ8,000円~1万5,000円程度と、戸建てに比べてかなり安くなります。
もちろん、これはあくまで一例です。
保険会社や、免責金額の設定、割引の適用などによって金額は大きく変動しますので、ご自身の家の正確な保険料は、必ず見積もりを取って確認するようにしてください。
築年数が保険料に与える「本当の影響」とは?
さて、本題である「築年数」が保険料に与える影響についてです。
一般的に、築年数が古くなるほど、建物の老朽化により水濡れなどのリスクが高まると考えられるため、保険料は上昇する傾向にあります。
しかし、その上がり方は、多くの方が想像するほど急激なものではありません。
保険会社によっては、保険料率を「築5年未満」「築5年~10年未満」といった形で細かく設定している場合もあれば、「築10年以上」や「築20年以上」といった、ある程度大きな括りで設定している場合もあります。
後者のような保険会社の場合、例えば築25年の家と築35年の家とで、保険料が全く変わらない、ということもあり得るのです。
「築30年だから、新築の倍以上になるのでは…」といった心配は、ほとんどの場合、杞憂に終わるでしょう。
築年数という一つの要素に過度に不安になるのではなく、先ほどお話しした他の4つの要素を上手にコントロールすることで、保険料は十分に調整可能である、ということを覚えておいてください。
見落としがち!「築年数割引」が使えなくなるデメリット
ただし、築年数が古いことによる明確なデメリットも一つあります。
それは、多くの保険会社が導入している「築浅割引(新築割引)」の対象外になってしまう、という点です。
この割引は、一般的に築10年未満などの比較的新しい建物を対象に、保険料を数パーセント割り引くというものです。
築30年の家の場合、基本的にこの割引の恩恵を受けることはできません。
だからこそ、築30年の家の火災保険選びでは、この割引がない分を、他の工夫でカバーしていく、という発想が非常に重要になります。
例えば、不要な補償を思い切って外したり、免責金額を少し高めに設定したり、あるいはオール電化割引など、他の適用可能な割引を探したりといった、積極的なアクションが、賢い保険選びの鍵を握るのです。
あなたの保険料はいくら?簡単セルフチェック
あなたの家は、保険料が高くなるタイプ?安くなるタイプ?
- 建物の構造は?
□ マンション(T構造)→ 安くなる傾向
□ 木造戸建て(H構造)→ 高くなる傾向 - 住んでいる場所は?
□ 災害が少ない地域 → 安くなる傾向
□ 台風や大雪が多い地域 → 高くなる傾向 - 希望する補償は?
□ 必要最低限に絞る → 安くなる傾向
□ あらゆるリスクに備えたい → 高くなる傾向 - 自己負担額(免責金額)は?
□ 高く設定する(10万円など)→ 安くなる傾向
□ 低く設定する(0円など)→ 高くなる傾向
専門家が厳選!築30年の家で「絶対に外してはいけない補償」リスト
火災保険を見直す最大の目的は、保険料を安くすることだけではありません。
もっと大切なのは、今のあなたの家の状態にぴったり合った、本当に必要な補償を、過不足なく備えることです。
特に、人間と同じように、家も30年という歳月を経て、さまざまな部分に「年齢」が現れてきます。
新築の頃には考えられなかったような、思わぬトラブルが起こりやすくなっているのも事実です。
この章では、築30年の家が抱える特有のリスクに焦点を当て、専門家の視点から「これだけは絶対に外してはいけない」と断言できる、重要な補償を厳選してご紹介します。
最重要!給排水管の老朽化に備える「水濡れ補償」
もし、築30年の家のための補償を、たった一つだけ選べと言われたら。
多くの専門家は、迷わずこの「水濡れ(みずぬれ)補償」を挙げるでしょう。
それほどまでに、この補償は築年数が経過した家にとって、極めて重要な意味を持つのです。
その理由は、壁の中や床下を通っている「給排水管の老朽化」にあります。
30年間、毎日休むことなく働き続けてきた水道管や排水管は、見えないところで少しずつ錆びたり、もろくなったりしています。
ある日突然、その劣化した部分が限界を迎え、破裂やひび割れを起こしてしまう。それが「漏水事故」です。
もし、あなたが旅行で家を空けている間にこの事故が起きたら、どうなるでしょうか。
帰宅したあなたが目にするのは、水浸しで使い物にならなくなった家具や家電、そして、水を吸って膨れ上がった床や、カビだらけになった壁かもしれません。
マンションであれば、さらに階下の部屋にまで被害が及び、多額の損害賠償を請求される事態にもなりかねません。
この、火災にも匹敵する甚大な被害からあなたを守ってくれるのが「水濡れ補償」です。
戸建てにお住まいの方も、マンションにお住まいの方も、この補償だけは、絶対に外してはいけない「必須科目」だと覚えておいてください。
電気系統のトラブルも増加。「電気的・機械的事故特約」の価値
給排水管と同じように、電気の配線もまた、30年の間に少しずつ劣化していきます。
目には見えませんが、壁の中の配線が傷んでいたり、コンセント周りに溜まったホコリが原因となったりして、ある日突然ショートし、火災につながる「電気火災」のリスクは、築年数が古い家ほど高まるといわれています。
また、家の中には、エアコンや給湯器、床暖房、ビルトインの食器洗い乾燥機など、たくさんの「機械設備」がありますよね。
これらの設備も、経年劣化により、突然故障してしまうことがあります。
こうした電気系統や機械設備の突発的な事故による損害をカバーしてくれるのが、オプションで付けられる「電気的・機械的事故(でんきてき・きかいてきじこ)特約」です。
特に、修理や交換に高額な費用がかかりがちな、建物に据え付けられた設備(ビルトイン設備)の故障に備えられるのは、非常に大きな安心材料となります。
必須とまでは言いませんが、築30年の家にとっては、検討する価値が非常に高い特約といえるでしょう。
家の「うっかり」に優しく。「破損・汚損補償」は必要?
「模様替え中に、うっかりタンスの角を壁にぶつけて、大きな穴を開けてしまった」
「掃除中に足を滑らせ、はずみでドアにひびを入れてしまった」
日常生活の中には、こうした「うっかり」が原因の、小さな、でも修理には意外とお金がかかる事故が潜んでいます。
このような、「不測かつ突発的な事故」によって建物や家財に損害を与えてしまった場合に役立つのが「破損・汚損(はそん・おそん)補償」です。
この補償は、あなたのライフスタイルによって、必要性が大きく変わってくる「選択科目」といえます。
例えば、まだ小さなお子さんや、室内で元気に走り回るペットがいるご家庭、あるいは、DIYや模様替えが趣味で、よく家具を動かす、といったご家庭では、この補償を付けておくと、いざというときに「入っておいて良かった」と感じる場面が多いかもしれません。
一方で、「家族も独立して夫婦二人暮らし」「特に家の中をいじることもない」という方であれば、この補償を外すことで、その分の保険料を節約するというのも、非常に賢い選択です。
ご自身の暮らしを振り返り、必要かどうかを判断してみてください。
自然災害のリスクを再評価!「風災」と「水災」の正しい選び方
最後に、自然災害への備えについてです。
家も人間と同じで、年を重ねると少しずつ体力が落ちてきます。
新築の頃なら何ともなかったような強さの台風でも、築30年を経た家にとっては、屋根や外壁にダメージが及ぶ原因となるかもしれません。
そのため、台風や竜巻、強風による損害を補償する「風災補償」は、基本的な補償として、しっかりとセットしておくことをお勧めします。
一方で、これまでも何度か触れてきた「水災補償」については、改めて冷静な判断が必要です。
この補償は、保険料に与えるインパクトが大きいため、本当に必要かどうかをしっかりと見極めるべきです。
そのための最強のツールが、お住まいの市区町村が公表している「ハザードマップ」です。
これを確認し、ご自宅の土地が洪水や土砂災害の危険区域に指定されていない、あるいは、マンションの高層階に住んでいる、ということであれば、水災補償を外すことを積極的に検討しましょう。
逆に、少しでもリスクがある場所に指定されているのであれば、近年多発する集中豪雨の被害を考えると、絶対に外してはいけない補償となります。
築30年の家の補償選び・優先順位
あなたの家にとって、本当に必要な補償を見極めましょう。
- 【◎ 絶対に必要(必須科目)】
火災、落雷、破裂・爆発、風災、水濡れ - 【○ 検討を推奨(選択科目・推奨)】
電気的・機械的事故特約、破損・汚損 - 【△ 立地やライフスタイルで判断(選択科目)】
水災、雪災、盗難
※特に水濡れ補償の重要性は高く、水災補償はハザードマップでの判断が鍵となります。
今日からできる!古い火災保険を「最強の家計の味方」に変える具体策
さあ、いよいよ実践編です。
築30年という節目を迎えたあなたの家の火災保険を、時代遅れの「お荷物」から、家計と暮らしを守る「最強の味方」へと生まれ変わらせるための、具体的な手順を追いかけていきましょう。
「なんだか難しそう…」と感じる必要は全くありません。
一つひとつのステップを、このガイドに沿って丁寧に進めていけば、誰でも、そして今日からでも、行動を始めることができます。
あなたの小さな一歩が、未来の大きな安心と、そして思わぬ家計の節約につながるはずです。
ステップ1:眠れる証券を探し出せ!現在の契約内容の「解読」
すべての始まりは、今あなたが加入している火災保険の内容を正確に把握することからです。
まずは、家の書類棚や引き出しの奥に眠っているであろう、「保険証券」を探し出してください。
住宅ローンを組んだときの書類と一緒に保管されていることが多いかもしれません。
もし、どうしても証券が見つからない、という場合でも諦める必要はありません。
契約した保険会社や、手続きをしてくれた銀行、不動産会社などの代理店に連絡すれば、契約内容を照会してくれます。
無事に証券が見つかったら、以下のポイントを重点的にチェックしてみましょう。
・保険期間:いつからいつまでの契約か?満期はいつ?
・保険金額:建物と家財、それぞれいくらに設定されているか?
・契約方式:保険金額の横に「時価」と書かれていませんか?それとも「新価」「再調達価額」?
・補償内容:火災や落雷以外に、「風災」や「水濡れ」といった補償は付いていますか?
この内容をスマホで写真に撮っておくだけでも、次のステップがぐっとスムーズになります。
ステップ2:我が家の価値を再発見!「建物評価額」の正しい計算
次に、新しい保険の土台となる、ご自宅の「正しい価値」を把握します。
ここで重要なのは、現在の主流である「新価(再調達価額)」、つまり「今、同じ家を建て直したらいくらかかるか」という金額です。
これを調べる最も簡単な方法は、保険会社のウェブサイトにある簡易評価ツールを利用することです。
お住まいの都道府県、建物の構造(木造など)、延床面積(または専有面積)などを入力するだけで、おおよその再調達価額をすぐに知ることができます。
また、家財道具についても、この機会に一度、家の中を見渡してみてください。
「もし、今ここにある家具や家電、洋服がすべてなくなってしまったら、買い直すのにいくらくらいかかるだろう?」と想像してみるのです。
家族構成の変化など、30年前とは状況も変わっているはずです。
一般的に、家財の保険金額は少し控えめに見積もるのが、保険料を抑えるコツの一つです。
ステップ3:未来のリスクを予測!ハザードマップで補償を「断捨離」
ステップ2で把握した「家の価値」に、どんな「補償」を着せてあげるかを選んでいきます。
ここで、あなたの家の未来のリスクを予測するための強力な武器となるのが、繰り返しになりますが「ハザードマップ」です。
インターネットで「〇〇市(お住まいの市区町村名) ハザードマップ」と検索すれば、すぐに閲覧することができます。
ご自宅の場所に印をつけて、洪水による浸水の深さや、土砂災害の危険区域に指定されているかどうかを確認しましょう。
この結果、もし水害のリスクが極めて低いと判断できるのであれば、それは「水災補償」を断捨離する大きなチャンスです。
新しい保険の見積もりを取る際に、「水災補償を付けた場合」と「外した場合」の2パターンで見積もりを依頼すると、その補償を外すことでどれだけ保険料が安くなるのかが具体的に分かり、判断がしやすくなります。
ステップ4:合い見積もりは常識!一括見積もりサイトで最適プランを探す
さあ、いよいよ新しい保険を探す段階です。
ここで絶対にやっていただきたいのが、複数の保険会社から見積もりを取って比較する「相見積もり(あいみつもり)」です。
保険料や補償内容は、保険会社によって本当にさまざまです。一社だけで決めてしまうのは、非常にもったいない選択といえるでしょう。
「でも、何社にも連絡して同じ説明をするのは面倒…」
そんなときに便利なのが、インターネット上にある「火災保険一括見積もりサイト」です。
サイトの指示に従って、ステップ2や3で準備した建物の情報や、希望する補償内容などを一度入力するだけで、複数の保険会社から、あなたの家に合ったプランの見積もりを無料(または有料)で取り寄せることができます。
各社のプランが一覧で比較できるので、どこが安くて、どこが手厚いのかが一目瞭然になります。これを利用しない手はありません。
ステップ5:解約と新規契約のベストタイミング
比較検討の結果、あなたの家に最適な新しい保険が見つかったら、最後は切り替えの手続きです。
ここで最も注意すべきなのは、「無保険期間」を作らないことです。
例えば、古い保険を10月1日に解約して、新しい保険の開始日を10月2日にしてしまった場合、10月1日の夜にもし火災が起きたら、どちらの保険も使えない、という最悪の事態に陥ってしまいます。
これを防ぐため、新しい保険の補償が開始される日と、古い保険を解約する日を、必ず同じ日に設定するようにしましょう。
また、古い保険がまだ満期を迎えていない場合でも、途中で解約すれば、残りの期間に応じた保険料(解約返戻金)が戻ってくることがほとんどです。
「満期までまだ数年あるから…」と先延ばしにせず、思い立ったが吉日。今すぐ行動を起こすことが、結果的にお得につながるのです。
保険料をさらに安くする3つの裏ワザ
- 割引制度をフル活用する:オール電化住宅割引や、WEB申込割引など、使える割引はすべて使いましょう。見積もり時に、どんな割引があるか積極的に質問するのがコツです。
- 保険会社の独自サービスを比較する:保険料だけでなく、「水回りのトラブルに無料で駆けつけてくれるサービス」や「鍵の紛失に対応してくれるサービス」など、保険会社独自の付帯サービスで選ぶ、という視点も持ちましょう。
- 代理店型とダイレクト型を比較する:担当者と相談しながら決めたいなら「代理店型」、とにかく保険料を抑えたいならインターネットで直接契約する「ダイレクト(通販)型」など、自分に合った販売形態の保険会社を選ぶことも重要です。
30年の感謝を込めて。大切な我が家と未来の暮らしを守る選択
30年間、雨の日も風の日も、暑い夏も寒い冬も、静かにそこにあり続け、あなたとご家族の暮らしを優しく見守ってきてくれた、大切な我が家。
家のあちこちに刻まれた小さな傷や汚れは、一つひとつが、かけがえのない思い出や、家族の歴史そのものなのかもしれません。
今回の火災保険の見直しは、単なる家計の節約術や、面倒な手続き、というだけのものではないのです。
それは、この30年間の感謝を込めて、これからもこの家で安心して、豊かに暮らし続けていくために、あなたがしてあげられる、とても愛情のこもった「メンテナンス」の一つといえるでしょう。
古いアルバムをめくるように、あなたの家の保険証券を一度、手に取ってみてください。
そして、これからの未来に、どんな安心を備えてあげるのが一番良いのかを、ゆっくりと考えてみる。
この記事が、あなたの大切な家との、そんな新たな対話を始める、小さなきっかけとなれたなら、これほどうれしいことはありません。
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