2026年1月28日
「かまくら祭り」で知られる秋田県横手市。
冬の美しい風景は全国的に有名ですが、実際に暮らす私たちにとっては、毎年の雪との戦いは死活問題です。
一晩で数十センチ積もるドカ雪、屋根の雪下ろし(雪寄せ)の重労働。そして春になり、雪が消えた後に見つかるのが「屋根や外壁の破損」です。
「軒先が折れ曲がっている…」
「雨樋が外れてぶら下がっている…」
「トタン屋根が雪の重みでベコベコだ…」
業者に見積もりを頼むと、足場代を含めて数十万円〜100万円近い金額を提示され、「こんな大金、すぐには出せない」と途方に暮れてしまう方も少なくありません。
しかし、諦める前に必ず確認していただきたいのが「火災保険」です。
実は、横手市の雪による屋根被害は、火災保険の「雪災(せつさい)」補償を活用することで、自己負担を大幅に抑えて修理できる可能性が高いのです。
「火事でもないのに保険?」と思われるかもしれませんが、これは正当な権利です。
今回は、特別豪雪地帯である横手市の地域事情に特化して、雪害修理が高額になる理由と、火災保険を正しく申請して家計を守るための完全ガイドをお届けします。
この記事でわかること
- 横手市の屋根修理が他県より圧倒的に高額になる「3つの理由」
- 「軒折れ」「すが漏れ」は雪災認定されるのか?具体的な事例解説
- 修理費用の半分を占める「足場代」も保険で下りる事実
- 古い契約に多い「20万円フランチャイズ」の壁と突破法
- 雪国で多発する悪徳業者(点検商法)の手口と対策
目次
なぜ、横手市の修理費用はこれほど高額になるのか?
「屋根をちょっと直すだけで、なんでこんなに高いの?」
見積もりを見て驚かれた経験があるかもしれません。しかし、横手市での工事が高額になるのには、豪雪地帯特有のやむを得ない理由があります。
1. 必須となる「強固な仮設足場」
屋根の修理を行う際、労働安全衛生法により安全な足場の設置が義務付けられています。
特に横手市の場合、雪の影響を受けにくい時期に工事が集中するため、職人の奪い合いになります。
また、雪国特有の「勾配のきつい屋根」や「2階・3階の高さがある克雪住宅」の場合、足場の設置面積が広くなり、一般的な住宅よりも足場代だけで20万円〜40万円かかることが珍しくありません。
修理箇所が小さくても、家全体に足場を組む必要があるため、初期費用が跳ね上がります。
2. 工事前の「排雪」コスト
冬場や雪解け直後に緊急工事を行う場合、業者のトラックを停めるスペースと、足場を組むスペースの「除雪・排雪」から始めなければなりません。
敷地内に雪を寄せる場所がなければ、トラックで雪を捨てに行かなければならず、その重機代と人件費が工事費に上乗せされます。
3. 雪国仕様の耐久資材
横手の重い雪に耐えるためには、安価な屋根材ではすぐに壊れてしまいます。
・0.35mm以上の厚みのあるガルバリウム鋼板
・雪の重みに耐えるための細かい垂木(たるき)ピッチ
・頑丈な雪止め金具やスノーネット
これら「雪国仕様」の材料を使用するため、どうしても材料費が高くなります。
火災保険は「雪害」の最強の味方
このように高額な費用がかかるからこそ、「火災保険」の出番です。
一般的な火災保険は「住まいの総合保険」であり、以下の自然災害補償がセットになっていることが大半です。
- 風災(ふうさい):台風、暴風による被害
- 雪災(せつさい):雪の重み、落雪、雪崩による被害
- 雹災(ひょうさい):降雹による被害
お手元の保険証券を確認し、「風・雪・雹」の欄が「○(対象)」となっていれば、あなたは申請する権利を持っています。
横手市で認定されやすい具体的な被害例
「屋根が壊れた」と言っても、症状は様々です。
横手市で認定されやすい代表的な被害事例を見ていきましょう。
① 軒先・軒裏の破損(雪庇による被害)
屋根の風下側にできる巨大な雪庇(せっぴ)。横手のような豪雪地では、これが巻き込むように垂れ下がり、軒先に強烈な負荷をかけます。
・軒先が下方向に折れ曲がった(軒折れ)
・軒裏の天井材(ケイカル板)が割れたり剥がれたりした
これらは雪の重みが原因ですので、典型的な雪災です。
② すが漏れ(※最重要)
寒冷地特有の現象です。屋根の上の雪が室内暖房の熱で解け、軒先で冷やされて再び凍ることで「氷の堤防(アイスダム)」ができます。
行き場を失った融雪水が、屋根材の継ぎ目(ハゼ)から逆流して室内に漏れてくる現象です。
一般的な雨漏り(経年劣化)は保険対象外ですが、「すが漏れ」は突発的な積雪・凍結現象が原因のため、雪災として認められる可能性が高いです。
(※証明が難しいため、雪害調査に詳しい専門業者の所見書が必須です)
③ 雨樋の脱落・歪み
雪が屋根を滑り落ちる際、雨樋を巻き込んで外側に開いたり、支持金具ごと引きちぎって脱落させたりします。
「少し曲がっただけ」と放置すると、そこから水が溢れて外壁を傷める原因になるため、早めの申請が重要です。
④ 設備機器の破損
屋根からの落雪が直撃し、給湯器(ボイラー)、エアコン室外機、灯油タンク、風除室のガラスなどが破損した場合も、建物付属物として補償対象になります。
豪雪地帯では、「冬の間はずっと雪に埋もれていて、いつ壊れたかわからない」というケースが多く発生します。
しかし、火災保険の申請には「事故日(被害発生日)」の特定が必要です。
「この冬のどこかで」ではなく、「〇年〇月〇日の大雪(または落雪)の後に被害を確認した」と報告できるように、気象庁の過去データ(横手のアメダス)などを参照して日付を特定する必要があります。
高額な「足場代」も全額補償される!
ここが最も重要なポイントです。
火災保険の雪災補償では、被害箇所の修理費だけでなく、「修理を行うために必要な仮設費用」も全額補償の対象となります。
- 修理のための仮設足場費用(30万円〜)
- 足場を組むための除雪費用
- 壊れた部材の撤去・処分費用
つまり、修理費用の見積もりが100万円だったとして、そのうち40万円が足場代だったとしても、全額が審査の対象になるのです。
「足場代が高いから、修理範囲を狭めよう」と我慢する必要はありません。
正当な申請であれば、足場代を含めた満額が認められます。
申請の分かれ道!「20万円フランチャイズ」の壁
ここで、ご自身の保険契約の内容をチェックしてください。
「フランチャイズ方式」か「免責方式」かによって、受け取れる金額が大きく変わります。
A. フランチャイズ方式(古い契約に多い)
平成中期以前に加入した長期契約(住宅金融公庫の特約火災保険など)によく見られるタイプです。
「損害額が20万円以上の場合のみ全額支払い、20万円未満は0円(切り捨て)」という条件です。
- 修理見積もりが19万円の場合 → 保険金0円
- 修理見積もりが21万円の場合 → 保険金21万円
横手市の場合、足場代を含めれば簡単に20万円を超えるため、この壁は比較的クリアしやすいと言えます。
逆に言えば、「足場代を計上し忘れたせいで、総額が20万円を下回り、1円ももらえなかった」という悲劇が起きないよう、見積もり作成は慎重に行う必要があります。
B. 免責方式(最近の契約に多い)
「自己負担額(免責金額)」を設定するタイプです。
例:免責3万円、修理費20万円の場合 → 17万円が支払われる。
少額の被害でも確実に受け取れるタイプです。
最大の敵「経年劣化」に勝つための対策
保険会社は営利企業ですので、できるだけ支払いを抑えようとします。
雪害申請において、保険会社(鑑定人)が最も主張してくる否認理由が「経年劣化(老朽化)」です。
「雨樋が壊れたのは、雪のせいではなく、プラスチックが古くなって脆かったからでは?」
「トタンが錆びているので、腐食による穴あきですね」
こう言われないために、以下の対策が必要です。
1. 「新しい傷」の証明
折れた断面が真っ赤に錆びていたり、木部が腐ってボロボロだったりすると、雪災とは認められにくくなります。
逆に言えば、「断面に金属光沢がある(新しい傷)」「木部が白く裂けている(新しい割れ)」という証拠写真があれば、突発的な力で壊れた証明になります。
2. 多角的な写真撮影
被害状況を証明するのは「写真」です。
屋根に登るのは危険ですので、業者に依頼して撮影してもらいましょう。
・建物の全景写真(被害箇所の位置関係を示す)
・被害箇所のアップ写真
・メジャーを当てて被害の大きさを示す写真
・水糸を張って歪みの度合いを示す写真
失敗しない保険申請の5ステップ
横手市で雪害修理を行う際の、正しい手順を解説します。
STEP 1:被害発見・専門業者へ連絡
まずは地元の板金業者、屋根業者、工務店に連絡します。
この際、必ず「雪害で壊れたので、火災保険の申請を考えている」と伝えてください。
横手の雪害事情に詳しく、保険申請用の写真撮影や見積もり作成に慣れている業者を選ぶことが成功の鍵です。
STEP 2:現地調査・見積もり作成
業者が訪問し、調査を行います。
雪解け直後は依頼が殺到するため、早めの予約をおすすめします。
見積書には「屋根修理一式」ではなく、「仮設足場費」「既存屋根撤去費」「野地板補修費」「新規屋根材施工費」など、詳細な内訳を記載してもらう必要があります。
STEP 3:保険会社へ事故連絡
ご自身で保険会社のコールセンター(または代理店)へ連絡します。
「いつ(〇月の大雪で)」「何が(屋根が)」「どうなった(歪んだ)」を伝えます。
STEP 4:鑑定人による調査(必要な場合)
被害額が大きい場合(数十万円〜100万円超)、保険会社から「損害保険登録鑑定人」が派遣され、現地調査が行われます。
【重要】 鑑定人の調査日には、可能な限り施工業者にも立ち会ってもらいましょう。
専門知識のない施主様が一人で対応すると、うまく言いくるめられて「経年劣化」と判断されてしまうリスクがあります。プロにはプロ同士で話をしてもらうのが一番です。
STEP 5:保険金確定・入金・着工
審査が通れば、指定口座に保険金が振り込まれます。
原則として、入金を確認してから工事契約を結び、着工するのが安全です。
(※緊急性が高い雨漏りなどを除き、先走って工事をしてしまうと、万が一保険が下りなかった場合に全額自己負担になります)
【注意喚起】横手市で注意すべき「悪徳業者」の手口
豪雪の後は、被災地を狙った悪質な業者が県外からもやってきます。特に高齢者世帯が狙われやすいので、実家のご両親にも注意を促してください。
- 「保険を使えば0円で直せます」と断言する
保険金が決まるのは保険会社です。業者が決定権を持っているかのように話すのは詐欺の常套手段です。 - 「申請代行手数料として保険金の30%〜50%をもらう」
本来、申請は契約者本人が行うものであり、見積もり作成自体は(工事を前提とすれば)無料で行う業者が大半です。高額な手数料契約を結ばせる業者は危険です。 - 「解約しようとしたら高額な違約金を請求された」
契約書をよく読まずにサインするのは絶対にやめましょう。クーリングオフの対象になる場合もあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 雪止め金具やフェンスの後付けも保険で出ますか?
A. 基本的には出ませんが、交渉次第です。
保険はあくまで「原状回復(元に戻す)」費用が対象です。元々ついていなかった雪止めを新設するのは「グレードアップ(性能向上)」になるため、基本は自己負担です。
ただし、屋根材を全交換する際に「現在の横手市の建築基準や慣習に合わせて雪止めが必要不可欠」と認められれば、工賃の一部として含まれる場合もあります。
Q. 3年前の雪害でも申請できますか?
A. 原則として「3年前」まで遡って請求可能です。
保険法により、請求期限は事故発生から3年と定められています。
ただし、時間が経てば経つほど「経年劣化」との区別がつかなくなり、認定のハードルは上がります。「気づいたらすぐ申請」が鉄則です。
Q. 保険金を受け取ったら、必ず修理しないといけませんか?
A. 修理を強く推奨します。
法的には保険金の使い道は自由ですが、修理せずに放置して、次にまた同じ場所が壊れた場合、二度目の保険請求はできません。
また、横手の雪は待ってくれません。次の冬までにしっかりと直し、家を守る体制を整えるべきです。
まとめ:横手の家を守るために、権利を正しく使おう
横手市の雪害は、家の寿命に関わる重大な問題です。
「雪国だから仕方ない」「古い家だから自費で直すのは厳しい」と諦める必要はありません。
火災保険は、皆様が高い保険料を支払って維持している「生活を守るための権利」です。
自然災害による被害であれば、堂々と申請して問題ありません。
ただし、認定を勝ち取るためには「雪害であることの証明」と「適正な見積もり」が必要です。
ご自身で判断せず、まずは地元の信頼できる屋根修理業者や、自然災害調査に詳しい専門家に相談し、屋根の状態をチェックしてもらうことから始めましょう。
その一本の電話が、数十万円、時には100万円以上の修理費をカバーし、あなたの大切な我が家を守ることにつながります。
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