火災保険の二重加入で得する?損する?補償内容の違いと正しい見直しポイントを紹介

マイホームを購入したり、住宅ローンを組んだりする際、「あれ、火災保険って二つ入ってる?」と疑問に感じたことはありませんか?

特に、以前からの保険契約と、新しくローンを組んだ時の指定保険が重なってしまい、二重加入の状態になっているケースは意外と多いんです。

「保険料を二重で払っているけど、もしもの時はおトクになるの?」そんな期待と不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれませんね。

結論から言うと、火災保険の二重加入は、ほとんどの場合「損」になってしまいます。なぜなら、保険の仕組み上、損害額以上の保険金を受け取ることはできないからです。

この記事では、火災保険の二重加入がなぜ損になるのか、そして、あなたが今すぐ確認すべき補償内容の賢い見直しポイントを、専門用語を使わず、わかりやすく解説していきます。

この記事を読んで、ムダな保険料の支払いをやめ、本当に必要な補償だけにすることができれば、きっと家計に大きな余裕が生まれますよ。

目次

火災保険の二重加入が「損」になる理由を理解する

毎月の保険料を二重で支払っているのに、なぜ損になってしまうのでしょうか。その答えは、火災保険が持つ基本的な性質にあります。

火災保険は「実損払い」の原則がある

火災保険は「損害保険」の一種で、「実際に発生した損害額しかお支払いしません」という「実損払い(じっそんばらい)」というルールが基本になっています。

例えば、あなたの家が火事で全焼し、その修理費用(損害額)が3,000万円だったとしましょう。

A社とB社の二つの火災保険に、それぞれ3,000万円ずつ加入していたとしても、受け取れる保険金の合計は、修理費用の3,000万円が上限となります。

この場合、A社とB社が話し合い、3,000万円を分担して支払うことになります。あなたが二つの保険に払った保険料は、無駄になってしまうわけです。

生命保険や医療保険との決定的な違い

「でも、生命保険や医療保険は、複数の保険に入っていれば、それぞれから保険金がもらえるんじゃないの?」という疑問を持つかもしれませんね。

その通りです。生命保険や医療保険は「定額給付」といって、契約で決められた金額が支払われます

しかし、火災保険や自動車保険などの損害保険は、「損害を補填すること」が目的です。儲けさせるためのものではないので、二重に入っても得にはならないのです。

🚨 ここが重要!

火災保険の二重加入で起こるデメリットは、保険料を二重で払い続ける「金銭的な損」と、いざ申請する時の手続きが非常に複雑になる「時間的な損」の二つです。

給付を受ける際、二つの保険会社とのやり取りや、書類提出の調整が必要になり、手続きが長引いてしまう可能性が高いですよ。

二重加入が発覚する主な原因とあなたのチェックポイント

なぜ、自分が二重加入していることに気づかないまま、保険料を払い続けてしまうのでしょうか。主な原因と、あなたが今すぐ確認すべきポイントを解説します。

原因1: 住宅ローン利用時の「指定保険」

家を新築または購入し、住宅ローンを組んだ際、銀行や金融機関から火災保険への加入が必須と指定されることがほとんどです。

この時、「以前から入っていた火災保険(家財だけ、あるいは古い家のものなど)」の存在を忘れ、新しい保険に加入してしまうことで、二重加入が生まれます。

特に、前の家から「家財保険」だけを継続している場合や、賃貸住宅の時に加入した火災保険を解約し忘れている場合などによく見られます。

原因2: 親族からの「契約引き継ぎ」

実家を相続したり、親名義だった建物を自分の名義に変更したりする際にも、二重加入が起こりやすいです。

親御さんが加入していた古い長期契約と、あなたが新たに自分の判断で加入した保険が重なり、どちらも有効な状態になっていることがあります。

建物の名義変更はしても、保険契約の名義変更や解約手続きを忘れると、この状態になってしまいます。

あなたが確認すべき3つの重要事項

二重加入かどうかを判断するために、今すぐ手元の保険証券で次の3点を確認してみましょう。

💡 火災保険のチェックポイント

  1. 契約者が誰になっているか:あなた自身か、配偶者か、親御さんか。
  2. 保険の対象が何か:「建物」なのか、「家財」なのか。
  3. 保険の対象となっている「所在地」と「建物」が、現在の自宅と同一のものか。

特に「家財保険」は、引っ越し先でも自動的に継続されやすいので、建物と家財で別々の保険会社に加入しているというケースも珍しくありません。すべてを確認し、重複がないか確かめることが大切です。

二重加入から脱却する!正しい「補償の見直し」ステップ

二重加入の状態だとわかったら、すぐにでも是正してムダをなくしたいですよね。ここでは、正しい手続きと、賢い補償の見直し方をステップ形式で解説します。

ステップ1: まずは保険会社に「現状」を伝える

二重加入が疑われる場合、まずは両方の保険会社(または代理店)に連絡を入れ、現在の契約状況を正直に伝えましょう。

その際、「建物の所在地」と「保険の対象(建物・家財)」が重複していることを明確にしてください。保険会社は、重複が判明した場合、適切な対応策を提案してくれます。

ステップ2: 「必要な補償」を一つにまとめる

二つの保険を解約するのは簡単ですが、大切なのは「補償の穴」を作らないことです。

どちらの保険を残すか決めるために、「特約やオプション」まで細かく比較しましょう。

  • 水濡れ補償:水回りのトラブルに強いか。
  • 個人賠償責任特約:自転車事故など、日常生活の損害をカバーするか。
  • 地震保険:地震や津波による損害をカバーしているか(火災保険とは別契約です)。

これらの特約が片方の保険にしか付いていない場合、その特約を外さないように、補償内容の引っ越しを検討しましょう。

ステップ3: 不要な契約を「解約」し返戻金を受け取る

残す保険が決まったら、もう一方の保険を解約します。火災保険は長期契約をしていることが多いため、解約すると未経過期間の保険料が「返戻金(へんれいきん)」として戻ってくることがあります。

戻ってくるお金があれば、ムダな二重払いをしていた分の損失を少しでも取り戻すことができますね。

ただし、保険料を払い始めてから日が浅い場合や、短期契約の場合は、返戻金がないこともあるので、解約手続きの際に確認してみてください。

二重加入の状態で「事故が起きた時」の保険金請求方法

もし、あなたが二重加入の状態だと気づく前に、実際に火災や台風などの事故が起こってしまったら、どうやって保険金を請求すれば良いのでしょうか。

請求の基本: 全ての保険会社に連絡する

事故が発生した場合、まずは加入しているすべての火災保険会社に「事故が起きたこと」を連絡します。

その際、「他の保険会社にも加入していること」を正直に伝えましょう。これを隠してしまうと、かえって手続きが複雑になり、最悪の場合、保険金が支払われないといったトラブルの原因になりかねません。

保険金の「按分(あんぶん)」支払いとは

二重加入が判明した場合、保険会社は「実損払い」の原則に基づき、損害額を二つの保険会社で分担して支払います。これを「按分支払い」といいます。

按分の割合は、それぞれの保険契約の「保険金額(最大で支払う金額)」の割合で決まるのが一般的です。

例えば、損害額が100万円で、A社で3,000万円、B社で2,000万円の契約をしていた場合、A社が60万円(3/5)、B社が40万円(2/5)を支払うことになります。合計額は、もちろん損害額の100万円で変わりません。

✨ 事前連絡のメリット

事故前に二重加入を解消しておけば、一つの保険会社とだけやり取りをすれば済むので、保険金請求の手続きが大幅に減ります

手続きがスムーズに進めば、修理開始も早くなり、安心できるまでの時間も短縮できますよ。

二重加入と間違えやすい「保険の見直し」のポイント

二重加入ではないけれど、補償内容が重複している、あるいは不足している「ムダな状態」になってしまっていることもあります。ここで、正しい保険の見直し方を学びましょう。

見直しポイント1: 「建物」と「家財」の保険金額は適切か

火災保険は「建物」と「家財」に分けて保険金額を設定します。この金額が、現在の価値と合っているかを定期的に見直すことが大切です。

例えば、新築時の建物の価値(新価額)で契約したまま、築20年経っても同じ保険金額では、保険料を払いすぎているかもしれません。

一方で、家財保険は、家族が増えたり、新しい高額な家電を購入したりするたびに、価値が上がっている可能性があります。家財の保険金額が不足していると、万一の際に生活再建が難しくなりますよ。

見直しポイント2: 「地震保険」は入っているか、不足はないか

火災保険だけでは、地震、噴火、またはそれらによる津波を原因とする損害は補償されません。必ず火災保険とセットで「地震保険」に加入する必要があります。

また、地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲でしか設定できません。最大でも半額までしか補償されない、ということを理解しておく必要があります。

「半額で大丈夫かな?」と不安な方は、地震保険の上乗せ特約がある保険会社を検討したり、地震に備えた貯蓄を増やすなど、別の対策を考える必要がありますね。

見直しポイント3: 「個人賠償責任特約」の重複を解消する

個人賠償責任特約は、「日常生活で誤って他人に怪我をさせてしまったり、物を壊してしまったりした時の損害」をカバーする、とても便利な特約です。

この特約は、火災保険だけでなく、自動車保険やクレジットカードの付帯サービスなど、様々な保険に「おまけ」として付いていることが非常に多いです。

もし、家族全員がカバーできる特約を一つ持っているなら、他の保険に付いている個人賠償責任特約は全て解約してもムダではありません。この重複も、ムダな保険料を払っている大きな原因の一つですよ。

知っておきたい!火災保険の「二重契約」と「併用契約」の違い

「二重契約」は損だと説明しましたが、実は「建物を複数の保険でカバーする」のが有効なケースもごく一部ですが存在します。それが「併用契約」です。

併用契約が有効なケースとは

併用契約は、一つの建物の価値(保険金額)を、二つの保険会社で意図的に分担して契約することです。

これは、特に保険金額が非常に高額になる巨大な建物や、特殊な建材を使っている建物などで、一つの保険会社だけでは引き受けが難しい場合に、リスクを分散させる目的で使われます。

一般的な戸建て住宅やマンションでは、一つの保険会社で全額をカバーできるため、この併用契約を行うメリットはほとんどありません。

「保険価額」を超えた契約は無効になる

火災保険には、「保険価額(建物が持つ本当の価値)」を超えて保険契約を結ぶことはできないというルールがあります。これを「超過保険(ちょうかほけん)」といいます。

二重加入で、合計の保険金額が建物の価値を大きく超えてしまうと、その超過した部分は保険料のムダになるだけでなく、保険会社によっては、契約自体を見直す必要が出てきます。

あなたの家が持つ「本当の価値(新価額)」を正確に把握し、その金額を超えないように契約することが、二重加入を防ぐ一番の対策となります。

💡 火災保険を見直す最大のメリット

  • ムダな保険料の支払いをストップし、家計の負担を減らせる。
  • 事故時の手続きがシンプルになり、スムーズに生活を再建できる。
  • 本当に必要な特約だけを残し、補償内容を最適化できる。

二重加入の解消は「保険のプロ」に相談するのが最善策

二重加入の解消や保険の見直しは、ご自身で判断すると、かえって補償に穴が開いてしまう危険性があります。

ここは、保険のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)や、複数の保険会社を取り扱う代理店に相談するのが最も安全で確実な方法です。

プロに相談する3つの大きなメリット

プロに相談することで、あなたは次の3つの大きなメリットを得ることができます。

メリット1:現在の補償内容を「客観的」に評価してもらえる。あなたが気づかなかったムダな重複や、足りない補償を明確にしてくれます。

メリット2:解約や名義変更の手続きをスムーズに進めてくれる。保険会社との複雑なやり取りを代行してくれるので、あなたの負担が大幅に軽減されます。

メリット3:他の保険も含めた「総合的な見直し」ができる。火災保険だけでなく、生命保険や自動車保険も含めた、家計全体の保険料のムダをチェックしてもらえるチャンスです。

「保険の見直しなんて面倒だな」と思わず、一度プロに相談するだけで、何十年分もの保険料のムダが解消できると思えば、行動する価値は十分にあるはずですよ。

この機会にぜひ、ご自身の火災保険を見直して、安心と節約を両立させてくださいね。

火災保険の二重加入は、本来避けたい状況であり、気づいた時点ですぐに解消することが家計の健全化につながります。特に長期契約をしている火災保険の場合、月々の保険料負担が小さく感じられるかもしれませんが、年単位、契約期間全体で見ると、二重払いによる損失は非常に大きくなります。例えば、35年一括払いで契約していた場合、その返戻金の計算も複雑になるため、プロの助けを借りることが賢明です。また、二重加入が起こる背景には、保険契約の難しさや、住宅購入時の多忙さが関係しています。マイホーム購入時は、住宅ローンや登記、引っ越しなどで頭がいっぱいになり、保険の細かな内容まで気が回らないものです。金融機関から勧められるままに保険に加入し、以前の契約を解約し忘れるというミスは、誰にでも起こりうることです。だからこそ、定期的な「保険の棚卸し」が大切になります。最低でも5年に一度は、全ての保険証券を広げ、それぞれの契約内容、保険期間、保険の対象をチェックする習慣をつけましょう。これにより、二重加入だけでなく、補償内容の陳腐化や、不要になった特約を見つけ出すこともできます。古い契約の中には、現在の最新の保険商品と比べて、補償範囲が狭いにもかかわらず、保険料が高いというデメリットを抱えているものもあります。例えば、水災補償の基準が古くて厳しすぎる、あるいは、盗難や破損などの補償が極端に手薄になっているなどです。二重加入を解消する機会は、最新かつ最適な保険商品への乗り換えを検討する絶好のチャンスでもあるのです。新しい保険に乗り換えることで、費用対効果の高い補償を手に入れることができ、結果的に家計の節約と安心の両方を実現できます。特に「個人賠償責任特約」の重複は、見落としがちなムダの典型例です。この特約は、家族全員が対象になることが多く、一つの契約に付いていれば、他は不要です。自動車保険や火災保険、さらには生命保険の特約としても存在するこの個人賠償特約の重複を解消するだけで、年間数千円〜1万円以上の節約になる可能性があります。これは、すぐにでもチェックしていただきたい重要なポイントです。保険は、「安心を買う」ためのものですが、その安心が二重になっていても、得られるメリットは一つしかありません。ムダを削ぎ落とし、本当に必要な補償に集中投資することが、賢い保険との付き合い方です。この情報が、あなたの保険の見直しと節約に役立つことを心から願っております。さあ、今すぐ保険証券を取り出して、二重加入チェックを始めてみませんか。行動を起こすことで、確実にあなたの未来は良い方向に変わりますよ。


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