2026年2月24日
「マイホームの購入で出費がかさんだから、火災保険はネットで一番安いところにしよう」
「更新の案内が来たけれど、今の代理店型は高いから、スマホで見積もりをとって乗り換えよう」
現在、スマートフォンひとつで簡単に見積もりが取れ、保険料が劇的に安くなる「ネット型(ダイレクト型)火災保険」が爆発的な人気を集めています。
従来の代理店型火災保険と比較して、数万円、場合によっては10万円以上も保険料が安くなるケースがあり、家計の節約には非常に魅力的な選択肢に見えます。
しかし、ちょっと待ってください。その「安さ」の理由を正確に理解していますか?
火災保険は、万が一あなたの家が燃えたり、台風で屋根が飛んだり、大雨で水没したりしたときに、数千万円の生活基盤を立て直すための「最後の命綱」です。
目の前の保険料を1万円ケチったばかりに、いざという時に「その補償は外されています」「自己負担が50万円かかります」と言われ、人生設計が狂ってしまう人が後を絶ちません。
ネット火災保険は「安い」のではなく、「補償を削って自己責任を負うことで安くできる仕組み」なのです。
本記事では、ネット火災保険の安さの裏に潜む恐ろしい「落とし穴」を徹底解剖し、人気のおすすめ各社(ソニー損保、セゾン自動車火災、SBI損保、チューリッヒなど)の特徴と注意点を比較解説します。
安さだけで選んで後悔しないための、正しい火災保険の選び方を身につけましょう。
この記事でわかる「安さの代償」と回避策
- なぜネット火災保険は代理店型より圧倒的に安いのか?(カラクリ)
- 保険料を安く見せる「免責金額(自己負担)」の恐ろしいマジック
- 「水災外し」で泣きを見る、内水氾濫の恐怖とハザードマップの罠
- ネット保険各社(ソニー、セゾン、SBI等)のメリット・デメリット比較
- 事故発生時、代理店がいない「孤独な保険金請求」を乗り切れるか
目次
なぜネット火災保険は劇的に安いのか? その「カラクリ」
まず、ネット型火災保険がなぜ安いのか、その構造を理解しておきましょう。
理由は大きく分けて2つあります。
1. 代理店手数料(中間マージン)のカット
従来の火災保険は、保険会社と契約者の間に「代理店(街の保険屋さん、不動産会社、銀行など)」が入ります。保険会社は代理店に対して、契約を獲得した見返りとして「代理店手数料」を支払っています。この手数料は、当然私たちが支払う保険料の中に上乗せされています。
ネット型は、インターネットを通じて保険会社と直接契約を結ぶため、この代理店手数料が一切かかりません。その分がダイレクトに保険料の安さに反映されています。
2. 補償の「細分化」による不要な補償のカット
代理店型の火災保険は、最初から「火災・風災・水災・盗難・水濡れ・破損」といったあらゆるリスクがセットになった「パッケージ型」で販売されることが多いです。
一方、ネット型は「火災と風災だけは必須だが、水災や盗難は自分で選んで外すことができる」という「組み立て型(オーダーメイド型)」が主流です。
高台に住んでいるから水災を外す、オートロックのマンションだから盗難を外す、といったカスタマイズを行うことで、極限まで保険料を削ることができるのです。
これだけ聞くと「ネット型は合理的で素晴らしい」と思うかもしれません。
しかし、この「自分で自由に補償を外せる」というメリットこそが、最大の落とし穴へと繋がるのです。
絶対にハマってはいけない!ネット火災保険「5つの落とし穴」
「安くできた!」と喜んでいた人が、いざ事故が起きた時に絶望する。そんな悲劇を生む5つの落とし穴を具体的に解説します。
落とし穴①:「水災外し」の恐怖。ハザードマップは完璧ではない
ネットで見積もりをする際、保険料を劇的に下げる魔法のボタンがあります。それが「水災補償を外す」ことです。
「うちは高台だから川が氾濫しても絶対に来ない」「マンションの2階以上だから浸水しない」と考えて、水災を外す人は非常に多いです。
しかし、水災リスクは「川の氾濫(外水氾濫)」だけではありません。
近年増加しているゲリラ豪雨では、下水道の処理能力を超えてマンホールから水が溢れ出す「内水氾濫(ないすいはんらん)」が都市部や高台でも頻発しています。
また、山の斜面を削って作られた造成地などでは、大雨による「土砂崩れ」も水災の対象となります。
「ハザードマップで色がついていなかったから外した」という自己判断で補償を削り、結果的に数百万の被害を全額自腹で直す羽目になるケースが急増しています。
落とし穴②:「免責金額」の初期設定に騙されるな
ネット保険の見積もり結果画面に表示される「最安プラン」。よく見ると、「免責金額(自己負担額):10万円」といった設定になっていませんか?
免責金額とは、事故で損害が発生した際、「この金額までは自分で払います」という約束のことです。
例えば、台風で屋根が壊れ、修理代が15万円かかったとします。免責金額が10万円に設定されていた場合、保険会社から支払われるのは「15万円 - 10万円 = たったの5万円」です。
もし修理代が8万円だったら、保険金は「1円も出ない」ことになります。
【警告】安く見せるための「デフォルト設定」
一部のネット保険では、見積もりの初期設定(デフォルト)が「免責10万円」や「免責5万円」になっており、パッと見の保険料を安く演出していることがあります。これに気づかずに契約してしまうと、少額の事故では保険が全く役に立たない「使えない保険」になってしまいます。
落とし穴③:「費用保険金」がカットされている、または上限が低い
火災保険には、家そのものを直す「損害保険金」の他に、それに付随する様々な出費をカバーする「費用保険金」というものがあります。
代表的なのが「臨時費用保険金(事故見舞金)」です。
これは、損害保険金の10%〜30%(上限100万円など)が上乗せして支払われる、非常にありがたい特約です。家が燃えてホテル暮らしをする際の宿泊費や、当面の生活費、ご近所への見舞品などに自由に使うことができます。
代理店型では自動付帯されていることが多いこの臨時費用保険金ですが、ネット型では「最初から外されている(特約でつけなければならない)」「付けても上限金額が低い(10万円まで等)」といった制限があることが非常に多いです。
「保険料が安い!」と喜んでいたら、実はこうした「手厚いサポート」がごっそり削られていた、というのはネット保険あるあるです。
落とし穴④:「破損・汚損」の補償がない(または免責が高い)
「子供が家の中でボールを投げて窓ガラスを割った」
「模様替え中に家具をぶつけて壁に穴を開けた」
こうした日常的なうっかりミスを補償するのが「不測かつ突発的な事故(破損・汚損)」という補償です。
実は、火災保険の請求理由でトップクラスに多いのがこの「破損・汚損」です。
しかし、ネット保険の最安プランではこれが外されていたり、この項目だけ免責金額が5万円などに高く設定されていたりします。日常の小さなトラブルをカバーしたいなら、必ず確認すべきポイントです。
落とし穴⑤:事故時の「孤独」。誰も助けてくれない自己責任
最も見落とされがちですが、最も致命的なのがこれです。
代理店型の火災保険であれば、台風で家が壊れた時、担当者に電話一本入れれば「大丈夫ですか!すぐに業者を手配しますね」「写真はこうやって撮っておいてください」「保険金請求書を送るのでここにサインしてください」と、手取り足取りサポートしてくれます。
しかしネット型の場合、担当者は存在しません。
被災してパニックになっている中、自分でコールセンターに電話をかけ(災害時は全く繋がりません)、自分でマイページにログインして事故状況を入力し、自分で修理業者を探して見積もりを取り、自分で被害箇所の写真を撮影してアップロードしなければなりません。
保険会社から「この見積もりは高すぎる」「これは経年劣化ではないか」と指摘された場合、素人であるあなたが、一人で保険会社と交渉(論理的な反論)をしなければならないのです。
この「サポートの無さ」こそが、安さの最大の代償と言えます。
ネット火災保険おすすめ各社の特徴と「隠れた注意点」
現在、ネット火災保険の主要プレイヤーとなっている各社の特徴と、選ぶ際に注意すべき(落とし穴になり得る)ポイントを比較します。
ソニー損保(新ネット火災保険)
自動車保険で有名なソニー損保の火災保険です。ネット型の中でも補償の柔軟性が高く、バランスの良い保険です。
- メリット: 地震保険の上乗せ特約(地震上乗せ特約)があり、最大で火災保険金額の100%まで地震の補償を手厚くできます。また、水災補償の支払い基準が「実損払(実際の損害額を支払う)」となっており、従来の古い保険のような「〇〇割払い」といった減額がない点も優秀です。
- 注意点・落とし穴: 補償を手厚くできる分、ネット型の中では保険料がやや高めになる傾向があります。また、築年数が古い家(築20年以上など)はネットからそのまま申し込みができず、電話での引き受け審査が必要になる場合があります。
セゾン自動車火災保険(じぶんでえらべる火災保険)
「おとなの自動車保険」で知られるセゾン自動車火災保険が提供しています。その名の通り、カスタマイズ性の高さが最大のウリです。
- メリット: 「火災・落雷・破裂・爆発」という基本の基本補償さえあれば、あとは風災も水災も盗難も、すべてを自由に外すことができます。徹底的に補償を削ぎ落とせば、他社を圧倒する安さになります。
- 注意点・落とし穴: 自己責任の極みです。「安くしたい」という誘惑に負けて風災まで外してしまい、台風で屋根が飛んだ時に絶望する人がいます。また、「臨時費用保険金」がセットできないため、事故後の見舞金やホテル代などは全額自腹になります。
SBI損保の火災保険
保険料の安さに定評があるSBI損保。価格重視の方に人気の高い商品です。
- メリット: 特に新築物件での保険料割引率が高く、他社と比較しても最安値クラスになることが多いです。免責金額の設定も細かく選べます。
- 注意点・落とし穴: 補償の組み合わせ(プラン)がある程度パッケージ化されているため、「セゾン」ほど細かく一つ一つを外すことはできません。また、水災を付けた場合の保険料の上がり幅が他社より大きい傾向があるため、水災リスクが高い地域では割高になる可能性があります。
チューリッヒのネット火災保険
外資系ならではの合理的な補償設計が特徴です。
- メリット: 保険料が安いことに加え、「類焼損害補償特約」や「個人賠償責任特約」など、必要な特約を安価に付帯できます。
- 注意点・落とし穴: 引き受け制限(加入条件)が厳しいのが最大の特徴です。「築年月が特定の年以前の建物」はネット申し込みができなかったり、木造の一戸建て(H構造)の引き受けに制限があったりします。誰でも入れるわけではありません。
代理店型 vs ネット型:結局あなたに向いているのはどっち?
ここまでネット火災保険の「安さと落とし穴」を解説してきましたが、では結局のところ、あなたはどちらを選ぶべきなのでしょうか。
以下の基準で判断してみてください。
ネット型(ダイレクト型)が向いている人
- 保険料を1円でも安く抑えたい人
- 自分でハザードマップを調べ、必要な補償と不要な補償を論理的に取捨選択できる人
- 約款(保険のルールブック)を読むのが苦にならない人
- いざ事故が起きた時、自分で写真撮影や業者手配、保険会社へのオンライン申請をテキパキとこなせるITリテラシーのある人
代理店型(損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上など)が向いている人
- 「いざという時の安心感」をお金で買いたい人
- どの補償が必要かわからないので、プロに提案してほしい人
- 万が一の災害時、パニックになって自分では何も手配できないと思う人
- 「臨時費用保険金」や「水災時の手厚い補償」など、充実した補償内容を求める人
代理店型の保険料が高いのは、「あなた専属のコンサルタント(代理店担当者)を雇うための費用」が含まれているからです。
台風で地域一帯が被災し、コールセンターがパンクして繋がらない時でも、自分の担当者の携帯に直接電話できるというメリットは、被災時には何物にも代えがたい安心となります。
ネット火災保険で失敗しないための「賢い契約手順」
それでもやはり「家計のためにネット火災保険を選びたい」という方へ。
落とし穴を回避し、安全に契約するための「3つの絶対ルール」をお伝えします。
Step 1:国土交通省のハザードマップを「正しく」読む
まずは国土交通省が提供する「ハザードマップポータルサイト」で自宅の住所を検索してください。
「洪水(外水氾濫)」「内水氾濫」「土砂災害」の3つのマップすべてを確認します。
洪水リスクがゼロでも、内水氾濫リスクがあるなら「水災補償」は絶対に外してはいけません。
マンションの2階以上で、絶対に水没しない確証がある場合のみ、水災を外すことを検討しましょう。
Step 2:「免責金額」はゼロまたは少額に設定して再計算する
各社の見積もり画面で、必ず「免責金額(自己負担額)」の項目をチェックしてください。
初期設定が5万円や10万円になっている場合は、一度「0円(免責なし)」に変更して見積もりを再計算してみてください。
免責をゼロにしても、保険料がそこまで跳ね上がらないのであれば、絶対に免責ゼロにしておくべきです。火災保険の請求は、10万円以下の小規模な修理(雨どいの破損など)が非常に多いからです。
Step 3:一括見積もりサイトで「補償条件を揃えて」比較する
1社だけで決めるのは危険です。「火災保険の一括見積もりサイト」を利用して、最低でも3社(ネット型と代理店型を混ぜるのがベスト)の保険料を比較しましょう。
この時、比較の条件(建物の評価額、水災の有無、免責金額)を全く同じ条件に揃えることが重要です。
A社は水災なし、B社は水災ありの状態で保険料を比較しても、何の意味もありません。
まとめ:保険の真価は「払う時」ではなく「使う時」に決まる
ネット火災保険の「安さ」は、企業努力だけでなく、「補償のスリム化」と「契約者の自己責任・労力」によって成り立っています。
保険料を支払っている平時においては、安いネット保険は最高の選択肢に思えます。
しかし、火災保険の真価が問われるのは、家が壊れ、途方に暮れている「被災時」です。
その時に、「水災を外していたから1円も出ない」「免責が10万円だから修理代が足りない」「誰も手続きを手伝ってくれない」という現実に直面してからでは遅いのです。
ネット火災保険を選ぶこと自体は決して悪いことではありません。
しかし、「なぜ安いのか」「何を失うリスクがあるのか」を完全に理解し、自分自身の責任において補償を組み立てられる人だけが選ぶべき、上級者向けの選択肢であることを忘れないでください。
あなたの大切なマイホームと家族の未来を守るために、価格の安さという「数字」だけでなく、万が一の際の「安心」という目に見えない価値とのバランスを、しっかりと見極めましょう。
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