2026年2月10日
「昨夜の強風で、屋根の板金がめくれてバタバタと音を立てている」
「台風というほどではなかったけれど、突風で飛んできた看板が外壁に当たり、穴が空いてしまった」
「春一番の強風で、雨どいが外れてぶら下がっている」
日本は台風だけでなく、「春一番」や「木枯らし」、そして発達した低気圧による「爆弾低気圧」など、年間を通して強風のリスクに晒されています。
ある日突然、自宅が風の暴力によって傷つけられたとき、修理費用の見積もりを見て青ざめる方は少なくありません。
足場代を含めると、屋根の一部修理だけで数十万円、全体補修なら百万円を超えることも珍しくないからです。
「自然災害だから仕方がない」「古い家だから自己負担は当然だ」
そう諦めて貯金を崩す前に、必ず確認していただきたいのが、ご加入中の「火災保険」です。
多くの方が「火災保険=火事のための保険」と誤解していますが、実は火災保険は「住まいの総合保険」です。
その中核をなす補償の一つが「風災(ふうさい)」であり、強風による被害は正当な保険請求の対象となります。
しかし、風災の認定には「経年劣化」という高いハードルや、「20万円フランチャイズ」という古い契約の罠など、知っておかなければ損をするポイントがいくつも存在します。
本記事では、突風や強風で家が壊れた際に、保険金を満額受け取り、自己負担なく修理するための知識を、事例と計算式を交えて徹底的に解説します。
この記事でわかる「風災補償」の全貌
- 台風じゃなくてもOK? 「風災」として認定される風速の基準
- 【部位別】屋根・外壁・雨どい・アンテナの被害事例と認定のコツ
- 保険会社が主張する「経年劣化」を覆すための反論ロジック
- 修理費以外も貰える? 「臨時費用」と「残存物片付け費用」
- 古い契約に多い「20万円フランチャイズ」の落とし穴とは
目次
そもそも「風災」とは何か? 定義と適用範囲
火災保険の証券を見ると、ほとんどのプランで「風災・雹災(ひょうさい)・雪災」がセットになっています。
では、具体的にどのような状況が「風災」として認められるのでしょうか。
「最大瞬間風速」が鍵を握る
一般的に、気象庁の定義において「強い風」とされるのは、最大風速が毎秒15メートル以上の風です。
保険認定の実務においては、「最大瞬間風速20メートル以上」の風が吹いた事実が、一つの目安となることが多いです。
重要なのは、「台風という名前がついているかどうか」ではありません。
春一番であれ、ゲリラ豪雨に伴う突風であれ、竜巻であれ、その地域で強い風が吹いたという事実があれば、風災の要件を満たします。
「ニュースになるような台風じゃなかったから」と申請を諦める必要は全くありません。
「風」が直接原因であること
風災補償の鉄則は、「風による直接的な損害」であることです。
または、風によって飛んできた物が衝突して起きた損害も含まれます。
- ○ 対象になる例: 強風で屋根瓦が飛んだ。看板が飛んできて外壁に穴が空いた。風圧で窓ガラスが割れた。
- × 対象にならない例: 強風で窓を開けっ放しにしていたら雨が入って床が濡れた(吹込み)。※ただし、風で窓ガラスが割れ、そこから雨が入った場合は対象になります。
屋根・外壁・雨どい…部位別の被害と認定ポイント
風災の被害は、屋根の上など普段見えない場所で発生していることが多いです。
プロの調査員がチェックするポイントを部位別に解説します。
1. 屋根(瓦・スレート・板金)
屋根は最も風の影響を受けやすい場所です。
特に「棟板金(むねばんきん)」と呼ばれる、屋根の頂上にある金属カバーの浮きや剥がれは、典型的な風災事例です。
- 板金の浮き: 釘が浮いて板金がパタパタしている状態。放置すると台風で飛びます。
- スレートのひび割れ・欠け: 何かが飛んできて当たったような鋭利な割れ方は、風災の可能性が高いです。
- 瓦のズレ・漆喰の崩れ: 強風による振動や、アンテナの倒壊によって瓦が割れることがあります。
2. 雨どい(軒樋・竪樋)
雨どいは風の影響を受けやすく、変形しやすいパーツです。
風圧で支持金具が曲がり、雨どい全体が傾いてしまったり、継ぎ目が外れてしまったりします。
「少し曲がっただけ」と思っても、雨水を排水するという機能が損なわれていれば、全面交換や部分交換の費用が認められます。
3. 外壁(サイディング・モルタル)
外壁の被害は「飛来物」によるものが主です。
近所の家の瓦、木の枝、看板などが飛んできて衝突し、サイディングが凹んだり、穴が空いたりするケースです。
「いつぶつかったかわからない」場合でも、傷の形状から飛来物によるものだと推測できれば、申請可能です。
4. アンテナ・カーポート・物置
これらは、保険証券上で「建物」の一部、または「付属建物」として含まれていれば補償対象です。
- テレビアンテナ: 強風で倒れたり、向きが変わって受信できなくなったりした場合。
- カーポート: 強風で屋根パネル(ポリカーボネート)が飛んでいった場合。1枚からでも請求できます。
- 物置: 強風で転倒したり、扉が歪んで開かなくなったりした場合。
保険会社との攻防:「経年劣化」への対策
風災申請において、最大の壁となるのが「経年劣化(老朽化)」という判定です。
保険会社(鑑定人)は、「これは風で壊れたのではなく、古くなって自然に壊れたものですね」と言って、支払いを拒否または減額しようとすることがあります。
「機能」と「外観」を分ける
古い家であれば、サビや色あせがあるのは当然です。
しかし、「サビていても、昨日の風が吹くまでは屋根として機能していた」のであれば、それは風災です。
【反論のロジック例】
「確かに屋根材の表面には経年によるサビが見られます。しかし、今回の被害箇所である棟板金の浮きは、サビによる腐食で穴が空いたのではなく、強風の『負圧(吸い上げる力)』によって釘ごと持ち上げられた物理的な変形です。
破断面に新しい金属光沢があることからも、最近の強い外力によって発生したことは明らかです」
このように、被害の原因が「老朽化」ではなく「突発的な外力」であることを論理的に証明する必要があります。
そのためには、被害状況を正確に撮影した写真と、気象データ(アメダス)に基づいた事故日の特定が不可欠です。
給付額の計算式と「20万円の壁」
「いくらもらえるのか」は、契約内容によって大きく変わります。
特に注意が必要なのが、自己負担額(免責)の設定です。
要注意!「20万円フランチャイズ」契約
昔の火災保険(特に長期契約のもの)に多いのが、「損害額が20万円以上にならないと、1円も払わない」というフランチャイズ方式です。
・損害額19万円の場合 → 支払額 0円
・損害額21万円の場合 → 支払額 21万円(全額)
この契約の場合、雨どいのちょっとした修理(数万円)では保険が使えません。
しかし、足場を組む必要がある工事や、複数の被害箇所(屋根+雨どい+カーポート)をまとめて申請することで、総額20万円を超えるケースは多々あります。
「小さな被害だから」と諦めず、全体の被害を合算して見積もりを取ることが重要です。
現代の主流「免責方式(エクセス)」
最近の保険は、「損害額から、決まった自己負担額(0円、3万円、5万円など)を差し引いて払う」方式が主流です。
・免責3万円で、損害額10万円の場合 → 支払額 7万円
このタイプであれば、少額の被害でも申請しやすいメリットがあります。
修理費以外も受け取れる「プラスアルファ」の保険金
実は、火災保険には「修理代(損害保険金)」以外にも、追加で受け取れるお金があります。
これを知っているかどうかで、手出しの金額が大きく変わります。
1. 臨時費用保険金(見舞金)
損害保険金とは別に、その10%〜30%(上限あり)が「使い道自由なお金」として支払われる特約です。
例えば、修理費が100万円認定された場合、プラス10万円〜30万円が受け取れます。
免責金額(自己負担)がある場合でも、この臨時費用で相殺してお釣りが来ることもあります。
2. 残存物片付け費用
壊れた屋根材や、倒れたアンテナを撤去・処分するための費用です。
産業廃棄物の処分費は年々高騰しており、意外と馬鹿になりません。
損害保険金の10%を限度として実費が支払われるケースが一般的です。
隣家の被害はどうなる?「賠償」の考え方
「強風でウチの屋根の瓦が飛んで、お隣さんの車を傷つけてしまった」
このような場合、弁償しなければならないのでしょうか?
結論から言うと、「不可抗力」であれば賠償責任は発生しません。
自然災害(台風など)による飛来物被害は、原則として「お互い様」であり、被害を受けた側が自分の保険(車両保険や火災保険)で直すのがルールです。
ただし、「工作物責任」という例外があります。
もし、あなたの家の屋根が以前からボロボロで、「いつ飛んでもおかしくない状態」を放置していた場合、管理瑕疵(かし)を問われ、賠償責任が生じる可能性があります。
この場合は、火災保険の特約である「個人賠償責任保険」や「施設賠償責任保険」を使うことになります。
申請から着金までの5ステップ
- 被害の発見・記録:
家の周りを一周し、スマホで写真を撮ります。屋根の上など危険な場所は無理をせず、業者に任せましょう。 - 専門業者への調査依頼:
工務店やリフォーム会社に連絡し、「風災で壊れたので、保険申請用の見積もりと写真が欲しい」と伝えます。
※ここで「保険申請に慣れている業者」を選ぶのが最大のコツです。 - 保険会社への事故連絡:
コールセンターやWebから事故報告をします。「いつ(事故日)」「何が(風)」「どうなったか(屋根が剥がれた)」を伝えます。
※事故日は非常に重要です。気象庁のデータを見て、強風が吹いた日を特定しましょう。 - 鑑定人による調査(必要な場合):
被害額が大きい場合などは、保険会社側の調査員(鑑定人)が現地を見に来ます。
業者に立ち会ってもらい、被害の正当性を説明してもらうのがベストです。 - 保険金の確定・入金:
認定結果の連絡があり、承諾すれば指定口座に入金されます。
【注意】悪徳業者・詐欺まがいの勧誘に気をつけて
風災の後は、「火災保険で0円で直せますよ」と訪問してくる業者が増えます。
すべてが悪徳ではありませんが、以下の特徴がある業者には要注意です。
【避けるべき業者の特徴】
- 「手数料として保険金の30〜50%を頂きます」:
これは「申請サポート」を名乗るコンサル業者の手口です。本来、修理を請け負う業者であれば、見積もり作成は無料(または常識的な範囲)で行います。高額な手数料を取る業者とは契約しないでください。 - 「わざと壊して被害を大きく見せましょう」:
これは詐欺罪です。絶対に加担してはいけません。 - 「解約しようとしたら高額な違約金を請求された」:
契約書をよく読まずにサインするのは危険です。クーリングオフができる場合もあります。
まとめ:風災保険は「家の健康保険」
家は、365日、風雨に晒されながらあなたを守っています。
その家が突風で傷ついたとき、修理費を補償してくれる火災保険は、まさに「家の健康保険」です。
「申請してもどうせ出ないだろう」「面倒くさい」と放置していると、傷口から雨水が入り、建物内部の腐食という取り返しのつかない事態を招きます。
被害を見つけたら、まずは信頼できる地元の業者に調査を依頼し、プロの目で「保険が使えるか」を判断してもらいましょう。
正当な権利を行使し、大切な資産であるマイホームを守り抜いてください。
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